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1.博士論文(環) >

Please use this identifier to cite or link to this item: http://hdl.handle.net/2237/9663

Title: 降水の季節性がアジア高山域の氷河の気候感度にあたえる影響
Other Titles: Effect of precipitation seasonality on climatic sensitivity of glaciers in Asian Highlands
Authors: MATSUDA, Yoshihiro
松田, 好弘
Issue Date: 25-Mar-2008
Other Identifiers: 甲7811
Abstract: ヒマラヤ・チベット高原からなるアジア高山域では、モンスーンの影響により降水が夏期 に集中する。そのため、古くから研究が盛んに行われている欧米の氷河とは異なり、これら の地域の氷河は夏期の降雪によって涵養される。そして、この夏期涵養が氷河質量収支に与 える影響について調べるために、降水が夏期に集中する(夏降水型) 気候下と冬期に集中する (冬降水型) 気候下での気候変動に対する氷河の応答度合(氷河の気候感度) の違いを比較する ことによって、夏期涵養氷河は冬期涵養氷河よりも気候変動に対して敏感であることが明ら かにされてきた。しかし、アジア高山域では入手できるデータが限られるため、物理的な熱 収支計算に基づいた数値実験によって氷河の年間質量収支が気候変動によってどのように変 わるかを調べた研究は、比較的降水量の少ないチベット高原上の氷河を対象としたものはあ るものの、降水量の多いヒマラヤの氷河を対象としたものについては無かった。 そこで本研究では、降水量の多いブータン・ヒマラヤのGanju La 氷河(年間降水量2589 mm) およびチベット高原北部のJuly 1st 氷河(同335~457 mm) において現地調査を行い、 質量収支と気象のデータを取得した。これらにXiao Dongkemadi 氷河(同672 mm) における 既存のデータを加え、これら異なる降水環境下の氷河における気温や降水量の変動による年 間質量収支の変化を調べることによって、氷河の気候感度について検討した。その際、夏降 水型気候下と冬降水型気候下に加え、ヨーロッパ等の氷河を対象とした数値実験で使われる こともある降水の季節変動が無い(一定降水型) 気候下も比較対象とすることにより、従来の 研究よりも更に詳しく降水の季節性が氷河の気候感度に与える影響について調べた。 降水量が多い時期は、厚い雲に日射が遮られることが多いので日射到達率(大気上端での 水平面日射量に対する地上での日射量) は小さくなりやすく、相対湿度は比較的高くなるが、 降水量が少ない時期にはその逆になる。このような関係が、アジア高山域内の様々な地点で 得られた現地観測データの解析によって示された。日射到達率や相対湿度の季節パターン(季 節変動のパターン) が変われば融解量も変わるが、日射量は氷河表面熱収支にとって主要な 要素であるため、特に日射到達率の季節パターンの違いは融解量に大きな影響を及ぼすと考 えられる。しかし、従来の降水の季節性と氷河の気候感度との関係についての研究では、日 射到達率や湿度を降水量とそれぞれ連動させることが氷河の気候感度の計算結果に与える影響を評価せずに、降水の季節パターンのみを変化させて数値実験を行っていた。そこでその 影響を調べた結果、日射到達率と相対湿度を降水量に連動させると、降水の季節パターンの みを変化させた場合に比べて氷河の気候感度の計算結果に概ね1 割前後の変化をもたらすこ とが分かった。 降水の季節パターンごとの計算結果を比べてみると、夏降水型気候下や一定降水型気候下 の方が冬降水型気候下よりも気温変動に対して氷河がはるかに敏感であるという結果が得ら れた。また、夏降水型気候下と一定降水型気候下では、降水量が少ない環境の氷河において は気温変動に対しての気候感度に大きな差は無いが、降水量の多いGanju La 氷河では降雪 量の変化量が夏降水型気候下の方が大きいので、夏降水型気候下の氷河の方が気温変化に対 して敏感であることが示された。さらに質量収支の変化の構成を調べると、降水量が少ない 環境の氷河においては、降水の季節パターンごとの気候感度の違いは主に融解量変化の違い によるものであるが、降雪量が多いブータン・ヒマラヤの氷河では、融解量変化よりも降雪 量変化の方が重要になることが分かった。 夏降水型気候下と一定降水型気候下で気温変動に対しての融解量変化に大きな差が無いの は、どちらの気候下でも氷河表面は夏期降雪によって融解期の氷河表面アルベドが高く維持 されている影響で融解が抑制されているが、温暖化が起こると、夏期降雪が雨に変わるため にアルベドが大きく低下し、それによって融解が加速されるからである。一方、冬降水型気 候下の氷河では、気温の低い冬期に降雪が集中するために温暖化による降雪量の減少は起こ り難い。また、融解期の氷河表面アルベドは元々高くないので、温暖化が起きてもアルベド の低下やアルベド低下による融解促進の影響が小さい。そのために、夏降水型気候下と一定 降水型気候下の氷河に比べると気温変動に対して敏感ではない。 降水量変動に対しては、夏降水型気候下と一定降水型気候下では氷河の気候感度はほぼ同 じであり、夏降水型気候下と冬降水型気候下でも大きな差は無い。 夏期に降水が集中するアジア高山域の気候下では異なる気候下に比べて温暖化による融解 量の増加が大きいことは、これまでの研究で指摘されてきた。しかし本研究の結果を踏まえ ると、降水量の多いヒマラヤ地域の気候下では温暖化による降雪量の減少が特に大きいとい うことが、温暖化による融解量の増加が大きいということと同等もしくはそれ以上に重要で あると考えられる。
Description: 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(理学)(課程)
URI: http://hdl.handle.net/2237/9663
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